モナコの1日 午後の部

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昼食の後一休みしたら、午後のモナコの街に繰り出そう。

出発地点はカジノ広場。(PLACE DE CASINO
シャルルガルニエの設計で 1878年に作られたカジノはモナコのシンボル。当時フランスではばくちが禁止されていたのに目をつけて、エレガントな雰囲気の博打場を作ったのは、モナコ大公シャルルIIIである。

観光客は必ずここに来る。カジノ広場の真ん中には芝生が盛り上がっていて、真ん中に噴水が水を噴き出している。鳥が手にとまった帽子男の銅像はベルギーの芸術家フォロンの作である。
毎年クリスマスには、この場所に意匠をこらした巨大なクリスマスツリーが立つ。年によってデザインが違って、今年はどんなツリーがたつか楽しみである。

カジノでちょっと遊びたければ、グランカジノか、カフェドパリの奥のアメリカンカジノに行く事になる。
カフェドパリの奥のカジノは、入場料はないし、大きな荷物を持っていなければそのまま入って、様子だけでも見ることができる。荷物やカメラを持っている人は、横の窓口に預けていくように警備の人に言われる。

グランカジノのほうは入り口に警備の人がいて、服装が乱れている人は入れないし、入り口付近でうろうろしていると、<あっちへ行け>と追い払われる。むかしマカオのカジノの入り口で、中国人の警備員に、警防で家畜のように扱われたことがある。その時よりはましにしても、邪険に扱われるのは嫌なものだ。


窓口で10ユーロの入場券を買うときにパスポートの提示を求められる。名前と生年月日はコンピュータに打ち込まれて、何かのときの資料にするらしい。もし将来、警察がからむ問題があれば、たちどころに何年何月何日にカジノに入った、という記録が出てくる仕組みである。
カジノ開店は正午。奥のプライヴェートルームは入場料20ユーロで、開店は午後4時。 あまり早く行って客が少なかったりすると、スロットマシーンもルーレットもやって面白くないだろう。あまり人が多すぎるのも考え物だが、ほどほどに人がいるのがいい。

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カフェドパリの並びには宝石屋ショパールやロレックスを売る高級時計店がある。ここのショパールは、シーズン中深夜2時までやっていて、カジノで儲けた人がぱあっといきたい時に備えている。
なおカジノに向かって入り口のすぐ左の下に、注意しないとわからないが、《ヴュルツ》 という質屋がひっそりとある。ギャンブルの負けが込んできたら、腕時計や身につけた宝石をここで現金に変える事ができる。質に入れるときだけでなく、質流れの宝石や時計を買うこともできる。
銀製品や昔のコインの専門家のここのオヤジは、20年も前に日本に行ったことがあり、日本びいきでボクの友達でもある。

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さて、カジノを正面に見て右手のほう、広場に面した建物は、ホテルドパリである。夏のヴァカンスシーズンのホテルドパリには世界中の有名人が集まる。
入り口から入ってすぐ左側のアメリカンバーでは、夕方からジャズの生演奏が始まるし、とにかく映画の中でしか見られないようなお上品な人たちも集まるので、ボクも時々目の保養のために行くようにしている。(ボクだけ浮いている)
シーズンには、ホテルドパリに泊まった有名人が出てくるのを、ホテルの外でカメラを持って待っている人たちもいる。
ホテルドパリに何十年も前から必ず夏に遊びに来る、ある日本人の話では、 <ここ数年ホテルドパリのサービスの質が落ちた> と言っていた。<一昔前の、本当に限られた人だけが泊まるホテルから、誰でも取りあえず金さえ払えば泊まれるホテルに変わってしまった>、と嘆いていた。まあ、普通の人なら一生に一度二度泊まる事ができれば満足するところであるが、モナコの国の将来を占うような言葉である。

カジノの前やホテルドパリの前には、これ見よがしに高級車が並べられている。 観光客は、いかにも自分が乗って来て今降りたというポーズで、駐車してある車の前で写真を撮っている。ロールスロイスやベントレー、ランボルギニ、アストンマーチン、ブガッティなんかも停まっている。ホテルの車係りは、ロールスで行くとホテルのすぐ前に停めてくれるが、緑のニッサンマーチで行くと、どこか人目につかない所に駐車するので、帰るとき車を持って来てもらうのにかなり時間がかかる。車差別

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カジノの建物にあるヴァンクリフを見ながら右の方へ歩いていこう。ここはモナコグランプリのコースでもある。 階段を海のほうへ下りると、建物の屋上がテラスのようになって散歩できるようになっている。天気の良い日は海の眺めが最高の遊歩道で、コロンビアの彫刻家ボテロの作品が何点か置いてある。観光客はここでも写真を撮る事に決まっている。

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ホテルドパリの建物に着いた形で、グランプリのコースに沿って、高級ブティックが並んでいる。プラダ、ラリック、ヴァレンチーノ、エルメス、グッチ、 ――――。グッチを見終わったら、右上のほうに上がっていく。

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豪華で成金趣味のホテルドパリと良く比較されるエルミタージュホテルが小さな広場の向こうにある。ホテルドパリもエルミタージュホテルもモナコの半官半民のSBMという会社経営で、モナコ国の顔ともいうべきホテルである。半官というだけあって、どこか仕事の仕方が役所風で、プライベート100%のホテルとの違いが感じられる、という人もいる。 ホテルの建物には、モナコ王室ご用達の宝石屋レポシがある。その横にはフェラガモの店がある。ホテルの入り口の反対側はプラダがあって、道を挟んでパレドラスカラという建物があり、奥に中央郵便局がある。郵便局にはモナコのコレクション用の切手を売るコーナーもある。

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エルミタージュホテルの前の小さな広場、スクエアボーマルシェ(SQUARE BEAUMARCHAIS) を横切って、カジノ広場の方へ帰っていこう。高級ブティックの並ぶ ボーザー通り(AV DES BEAUX-ARTS) である。 YSL、クリスチャンディオール、ショーメ、ピアジェ、ブルガリ、ルイビトン、カルチエ ―――――。

ルイビトンは未だに人気が衰えず、モナコの店は2階もある大きくてきれいな店である。ボクがモナコに来始めた20年ほど前は、ルイビトンは売り場がほんの6畳ほどの小さな店で、ルイビトンの中でも面積あたりの売り上げが一番多いのだと店長が言っていた。パリの次に南フランスでも、日本人をはじめ中国人、ベトナム人の買い付けの人が押し寄せて来るので、アジア系の客を見ると迷惑そうな顔をされることがある。ボクが自分用の財布を買おうかと見に行った時、 <もう来るな>と言われたことがある。もちろんそれ以来二度と行っていないが、やはりボクは、自分でルイビトンの財布を持つような人に思われなかったのだと反省している。 もちろん、いかにも上品なあなたなら追い返されることはない。

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左の方に上がっていくと、スポーティングという建物の入り口がある。中にはハーゲンダッツや、モナコで唯一の映画館もある。そのすぐ横には、シャネルの店がある。

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カジノ広場の北側は、噴水が水を噴き上げ、手入れの行き届いた花壇の公園がある。公園の下は地下7階までの駐車場になっている。 公園を横切って反対の道 マドヌ通り(AV DE LA MADONE)に出てみよう。 メトロポールホテルとショッピングセンターへの降り口がある。

イギリス系の資本で建てられたメトロポールホテルの地下が3階のショッピングセンターになっている。 道からエレベータで下に下りていくと、そこはショッピングセンターの3階。  順次エレベータで下がっていくと1階から、F1のコースになっているスペリュグ通り(AV DES SPELUGUE)に出られるようになっている。

3階には、モナコの陶器マニュファクチャードモナコがある。コーヒーカップ1個 95ユーロ、テーポット一個 910ユーロなど、繊細できれいであるが、ちょっと値が張る。 お値段の事を言わない王室御用達。 植物を使ったオブジェ風のものを売る店セグラティには、蛇の皮をまいたろうそくや、様々なインテリア小物が売られている。ボクが花の店をしていた時に、ヨーロッパ中回って仕入れた商品に良く似ているが、お値段はうちの店の2倍くらいする。メトロポールという場所代ということか。 サントロペにも店のあるヴィレブルカンは、海辺のもの売っていて、男性用海水パンツがある。パンツだけ売っていて、よく経営が成り立っているなと感心する。 ピンクの海パンが印象的。 その他、3階にはメガネやや靴屋、バッグ屋など、また日本食レストランもある。


2階は服飾関係の店が多い。ケンゾー、ダンヒル、クリスチャンラクロワ、階をぶち抜いて男女ものをいろいろ置いてあるモンテカルロフォエバーもある。派手でキッチュな小物アクセサリーを売るロンドンの店 ブッター&ウィルソンが目立っている。男性ものの服を売るソシエテでは、ボクも時々服を買うことがある。

1階にはFNAC(フナック)モナコがある。PPRグループの一員、ヨーロッパに67の店舗があり、本やレコード、テレビやコンピュータなど文化的な商品を売ってがんばっている。 スペインのマドリッドでもイタリアのトリノでも、fnacを見つけてCDを買いあさった事がある。一昔前に、本の付加価値税が19.6%なのはおかしいとして、5.5%に落とした値段で売っていた。 その時の差額はfnacが自腹を切ったはずである。政府に立て付いても文化を普及させようとする態度はご立派。ボクもこの界隈で暇ができるとfnacを覗いている。しかしCDや本の在庫がニースやパリにくらべて少ないのは、やっぱり3万人しか人口のいないモナコだからだろう。 一階は子供靴屋メルセデスや、英語やドイツ語の週刊誌の揃ったキヨスクなどもある。化粧品を売っているヘルスストアの袋には漢字で <天>と書いてある。東洋の神秘を感じるのか、この袋に荷物を入れて歩く人が多いので、歩く宣伝広告になっている。

一階の出口から出ると、そこはすでに書いたように 、F1のコースのスペリュグ通り(AV DES SPELUGUE)である。 ショッピングに疲れたら、この辺でお茶にすることにしよう。 お勧めは、ホテルメトロポールの喫茶室。そうでなければF1コースをちょっと下りた場所にある、フェアモンモンテカルロホテルのピアノ喫茶である。

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ホテルメトロポールに行くには、今来たコースを逆に行って、ショッピングセンターの上の入り口のすぐ横がホテルの入り口になっている。日夜案内人のいるホテルへの緑の門を入り、20mほど下るとホテル建物がある。2004年にジャックガルシアのデザインで改装工事をしてきれいに生まれ変わっている。 ホテル地上階の奥のレストランは、ジョエルロブションで、日本にも同名のレストランがある。

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フェアモンモンテカルロホテルへは、ショッピングセンターの一階の出口で出て、そのまま下のほうへ降りていく。50mも行くと、F1の有名なヘアピンカーブである。

そのカーブを囲むように建っているのが、かつてのロブズモンテカルロホテル、その後名前はモンテカルログランドホテルになり、最近さらにフェアモンモンテカルロに変わったホテルである。 F1のコースは実際に自分で走ってみると分かるが、カジノ前から道が下り坂になっていて、ショッピングセンターの前で右にカーブして、すぐに大きく左のヘアピンなので、このカーブをF1のレーサーが時速70kmで曲がりきるのは信じられないことである。 ピアノバーはフェアモンモンテカルロホテルに入って、真っ直ぐ奥の左側にある。明るかったら海の眺めがきれいでロマンチックである。

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さて、お茶を飲んだ後、まだ散歩する元気が残っていたら、ホテルを出てそのまま右の方へ降りていく。 F1のコースは海のほとりを右に曲がって、時速300kmで走り抜ける直線のトンネルに入るのであるが、今日の散歩のコースは左である。

地中海の水平線を背景に、日本風の門が見える。 日本庭園(jardin japonais)である。 九州の庭園設計士、別府保男氏の造園で、1994年、今は亡きグレースケリーの遺志をついで完成した日本庭園である。今でも別府さんは年に一回はモナコに来て庭園の手入れをしている。木や花はヨーロッパで調達したので、ローズマリーが茂っていたりするのはモナコならではの風景だ。

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そろそろ、夕食になにを食べようか気になってくる時間になった。 食前酒は、プリンセスグレース通り(AV PRINCESSE GRACE)をちょっと行ったところにある、SASS(サス)カフェか、その隣のブラックダイヤモンドで一杯飲むことにしよう。ここは夜来るとモナコのお洒落な大人たちのたまり場になっている。 食前酒の時刻にはまだ人は少ない。食後ゆっくり出直す手もある。

食前酒として、ちょっとお上品にいこうと思ったらグラスシャンペンがいい。 そうでなければビールや、カシスを白ワインで割ったキールなどがある。 南フランスで庶民的な食前酒といえば<パスティス>である。ウイスキーのような色の酒を氷水で割ると、白濁してアニスの香りが広がる。 この香りをかぐと、ある暑い夏の昼下がり、プロヴァンス地方でボクが初めてこの酒を飲んだ時のことを思い出す。 もうそれは26年前のことになってしまった。

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